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2023年1月1日

庶務部・代表社友 新年号あいさつ

 3年ほど前にベストセラーとなった『妻のトリセツ』。著者は人工知能研究者、随筆家である黒川伊保子氏。内容は、脳科学の立場から女性脳の仕組みを前提に妻の不機嫌、怒りの理由を解明し、夫側からの対策をまとめた、妻の取扱説明書とのこと。その黒川氏と道友社社長松村義司氏との対談が、最新刊の『すきっと39号』に掲載されました。
 その対談の中で次の黒川氏の発言が目をひきました。
 「脳を一つのエンジンに見立てると、若いときの脳というのは高速で回転しますが、高速すぎてギアが噛み合っていない状態です。ところが年齢を重ね、多くの成功や失敗を経験するなかで、脳は適正な速度を理解し、ギアが噛み合う速さで廻るようになる。脳が一番良い状態にまで成熟するのは60代なんですよ。」
 いみじくも松村社長、「いま私は59歳ですから、そのお話には勇気づけられますね」と発言されましたが、先生の破顔が浮かんでまいります。私もまた、うれしくなって来ました。
 確かに六十半ばの私にしても、物忘れは多くなって来ましたし、頭の中の考えと、発言する内容とが乖離する時があり、半ば呆然とすることもしばしばあります。ですが、その一方で、人の話をよく聞くようにもなり、即断するのでは無く、積み重ねた思考によって物事を判断する時もあるような気がします。勿論、黒川氏が言う〝脳の成熟〟は、ただ単に年齢を積み重ねればいいというものでもなく、例えば、何らかの向上心、探究心は必要かと思います。
 蛇足で失礼します。『すきっと39号』を読んでいるとき、何気なく手にした、今年発刊された阿川佐和子の『この噺家に会いたい』。15人との対談の中で、昨年81歳で亡くなられた人間国宝柳家小三治師匠とのやりとり。(2009年の対談)
小三治 落語はウケようとしてウケるもんじゃないんです。人物が生き生きとして蠢いていれば、面白くできているから笑っちゃう。それができないのに無理矢理お客さんを笑わしたときの、臍を噛むような後悔の気持ちはほんとにイヤなもんですよ。その晩眠れない。
阿川 今もですか。
小三治 しょっちゅうですよ。それをどう解決するかで、日夜悩んでいる。
阿川 満足いくことはない?
 なんだか勇んでまいりました。
 本年も布教活動に、修理丹精にと、『天理時報』をはじめ、お道の書籍をご利用頂き、またその記事の感動を廻りの方々にお伝え頂きたく存じます。どうぞよろしくお願い致します。

庶務部長・代表社友 加地道喜