福祉厚生部 新年号あいさつ
5年前のこと。1年生と5才の姉妹、5年生と4年生の兄弟、この里子に加え、ある方の依頼で40代の男性Nさんを預かることになったのです。このNさんは、コミュケーションがとても下手で、どこへ行っても人間関係が上手く行かず、仕事も長続きせず、その都度家族に金銭的に迷惑をかけ、親兄弟から縁を切られた人です。出来れば少しでも働いて、次へのステップとなれるようにと半年間の期限をつけさせてもらいました。
始めて教会に来られた時、Nさんは人の目を見ることができず、挨拶もモゾモゾと何を言っているのかわかりません。こちらから話しかけないと、自分からは何も喋らないのです。家内は「私こんなに暗い人見たことない。」と言い、本当にその通りで、これは働くのは無理かもしれないと思いました。半年間教会にいて少しでも元気になってもらえば良い。そういう気持ちでお世話取りさせてもらおう、と家内と話しました。
私は、最初に神殿掃除を教えました。とってもよくやって、上段をピカピカになるまで丁寧に拭いてくれます。家内は、教会内の掃除を教えました。すごく綺麗にしてくれます。母が外回りの掃除や整理に連れて行きました。母は、「この人は立派な仕事をする人だ。」と言い、「こんなに丁寧な仕事をするのに、どうして仕事長続きしなかったの?」と尋ねると彼は、「自分は人が何を考えているかよくわからない。だから、怒鳴られる、そしたら怖くて仕事行けなくなります。」と。「そうか、じゃあ暫く教会のひのきしんで行こう!」となり私も家内もこの人は仕事に行くのは無理だろうと思っていました。ところが一か月ほどで別人のようになっていくのです。
ある日、教会に戻ると、5才の女の子がNさんの膝の上に抱っこされテレビを見ているのです。1年生のお姉ちゃんが「次私の番」と言って交代します。抱っこされている方も、している方もとっても幸せそうです。
今度は、風呂場から大きな笑い声が聞こえてきます。男の子たちとNさんが一緒にお風呂に入っているのです。とっても楽しそうでした。私は毎晩寝る前に男子の部屋をチェックします。すると、2つ布団を並べていたのが、3つになっていました。Nさんが自分の部屋から布団を運び、一緒に寝ているのです。スヤスヤと。
その頃から食事の時には、大きな声で笑ったり話したりする様になってきたのです。これなら働く事が出来るかもと思い、信者さんの経営する会社を紹介しました。半年間の契約で皆勤賞でした。その後、社長に惜しまれて退職し、自分で見つけた道東の会社に就職しました。
「やっと誰にも迷惑をかけないで生きて行く自信が出来ました。この恩は忘れません。」皆に見送られての出発でした。今でも子供たちの誕生日にはプレゼントが送られてきます。
私たちは、強く感じるのです。教会に来る人は、偶然来たわけでもなく、行政が連れてきたのでもない。親神様が手を引っ張って連れて帰って来てくれているのだと。
福祉厚生部長 五十嵐 仁